#9. 成長を促すモヤモヤ~コーチングとネガティブ・ケイパビリティ~
ネガティブ・ケイパビリティという言葉をご存じですか?
最近、この言葉に興味を持ち、いくつかの本を読んでいます。今日はこのネガティブ・ケイパビリティについてお話ししていきます。
ネガティブ・ケイパビリティ 答えを急がない勇気 著 / 枝廣 淳子
ネガティブ・ケイパビリティとは何か?
ネガティブ・ケイパビリティの対義語は「ポジティブ・ケイパビリティ」です。
これは「情報収集力」「計画実行力」「プレゼンテーション能力」「問題解決能力」といった能力を指し、ビジネスではこのスキルが高い人は評価されることが多いでしょう。また、このスキルが高い人は、自ら考え、計画を立て、実行に移し、目標に向かって着実に前進できる可能性が高いでしょう。
一方、ネガティブ・ケイパビリティは、少し異なる視点の力です。これは、「解決できない状況に耐える力」「違和感を抱えながらもとどまる力」「曖昧さを急いで処理せず、そのままにしておく力」を指します。意思をもって結論を出さないという、ある種のもどかしさを伴う状態でもあります。しかし、この“曖昧さに耐える力”こそが、成長のために重要な資質になるそうです。
モヤモヤと向き合うコーチング
私がコーチングをする中で、クライアントさんが「言葉にできないモヤモヤ」を抱えていることがたびたびあります。セッションを終えたクライアントさんが「気持ちがすっきりして、前向きになれました。」と言ってくださると、私は大きな喜びを感じます。そのため、コーチとして「モヤモヤを言語化し、前向きな気持ちに変えること」が良いコーチングの条件だと思っていました。
しかし、ネガティブ・ケイパビリティの考え方に触れてから、早く解決したり納得したりすることが、かえって成長のチャンスを逃す可能性があると知りました。また、クライアントだけでなく、コーチ自身にも「すっきりしてほしい」という気持ちを手放し、クライアントのモヤモヤと一緒にじっくり向き合うネガティブ・ケイパブリティが求められます。
コーチングの時間は、日常の忙しさを忘れ、自分と向き合う貴重な機会です。その中で出会うモヤモヤを、あえてすぐに解決せず、違う角度から見てみたり、「ここまではわかるけれど、この先はまだ見えない」と認めてみたりすることが大切だと感じました。モヤモヤをそのままにしておくことで、ふとした瞬間に新しい発見が生まれることもあります。モヤモヤを成長のきっかけと捉え、その過程を楽しみながら進むことが、自己成長へとつながっていくのです。
ネガティブ・ケイパビリティで待つ場面と、ポジティブ・ケイパビリティで目標達成に向けて行動していく場面とのスキルの使い分けが必要となりますね。
日常生活やビジネスに役立つネガティブ・ケイパビリティ
ネガティブ・ケイパビリティは、日常生活のあらゆる場面で役立ちます。たとえば、子どもや友人の悩みを聞くとき、また部下の成長を見守るときに、「口出しをせずじっくり待つこと」ができるかが、相手との信頼関係を深める鍵にもなるでしょう。
この力を備えた上司は、部下に答えを押し付けるのではなく、自主性を尊重し、自ら成長するのを待つことができます。結果として、部下が自走する力を身につけ、チーム全体が強くなります。ビジネスでは、ポジティブな能力ばかりが注目されがちですが、ネガティブ・ケイパビリティこそが、長期的な成長を支える土台になると言っても過言ではありません。
私もこの力を、必要なときに取り出していつでも使えるスキルとして磨いていきたいと思います。友人や家族との会話でも、仕事においても、相手を急かさず、その瞬間を大切にすることで、より豊かな関係性を作れたらと思います。
まとめ
今日は、”ネガティブ・ケイパビリティ”について考えてみました。
即断即決が求められる社会ですが、この“曖昧さに耐える力”も大切なスキルであることがもっと世の中に広まっていくといいなと思います。